top of page

2024

​朝
 

浅い眠り、苦い夢。目覚ましが鳴ってもまぶたが重い。

わたしのいない世界を考えていた。わたしのことを思い出せなくなったひと。わたしの声がとどかないように扉をしめたひと。その世界はなに色なんだろう。

みつけそうになるのにどの色もちがう。

 

薄く持ち上げた目に、カーテンのすきまから白い光が見えた。

とおく鳥の鳴く声がする。

読みかけの本にはさんだ赤いしおり。きのう植えた黄色い花。子猫のもようの青いエプロン。

透明なグラスにいきおいよく水をくんで、ひと息に飲もう。

窓をあけよう。

 

明るくなるから朝なのじゃない。

朝はわたしが作るんだ。

Included Book
​収録フォトブック
hyoushi
(画像をクリックするとスライドショーでご覧いただけます)
bottom of page